「どっこいしょ」の語源は修験道の掛け声?立ち上がるときの口癖の由来


1. 「六根清浄」が語源とされる

「どっこいしょ」の語源としてもっとも有力なのは、修験道(しゅげんどう)の掛け声「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」が変化したという説です。山岳修行者が険しい山道を登る際に「ろっこんしょうじょう」と繰り返し唱えたものが、長い年月を経て「どっこいしょう」→「どっこいしょ」に変化したとされています。

2. 「六根」とは仏教用語

「六根」とは仏教で人間の感覚器官を指す言葉で、眼(げん)・耳(に)・鼻(び)・舌(ぜつ)・身(しん)・意(い)の六つです。「六根清浄」とは、この六つの感覚を清らかにすることを意味し、煩悩を捨て去って心身を清めるための祈りの言葉でした。

3. 富士山の登山でも唱えられた

江戸時代には富士講(ふじこう)と呼ばれる富士山信仰が盛んで、登山者たちは「六根清浄、お山は晴天」と唱えながら山を登りました。この掛け声が庶民に広まる過程で音が崩れ、「どっこいしょ」という日常語に変わっていったと考えられています。

4. 相撲の「どっこい」との関係

相撲の掛け声にも「どっこい」という表現があります。力士が力を込めるときに発する「どっこい」も、同じく「六根清浄」から変化したとする説があり、力を入れる場面で使われる点が共通しています。

5. 「よっこいしょ」は「どっこいしょ」の変形

「よっこいしょ」は「どっこいしょ」の音が変化した言い方とされています。どちらも力を込めたり立ち上がったりする場面で使われますが、「よっこいしょ」のほうがやや軽い動作に使われる傾向があります。

6. 科学的には「掛け声効果」がある

スポーツ科学の研究では、力を入れる際に声を出すと筋力の発揮が向上することが確認されています。「どっこいしょ」と声を出すことで腹圧が高まり、体幹が安定して立ち上がりやすくなるとされ、単なる口癖ではなく合理的な行動といえます。

7. 年齢に関係なく使われていた

「どっこいしょ」は高齢者の口癖というイメージがありますが、もともとは山岳修行者の掛け声であり、年齢に関係なく使われていました。江戸時代の文献でも老若男女が力仕事や重い物を持ち上げる際に使った記録が残っています。

8. 別の語源説も存在する

「六根清浄」説以外にも語源の説はあります。「どこへ」が変化したという説や、サンスクリット語の掛け声に由来するという説もありますが、いずれも決定的な証拠はなく、「六根清浄」説がもっとも広く支持されています。

9. 方言によるバリエーション

地域によって「どっこいしょ」の言い方にはバリエーションがあります。「どっこらしょ」「よっこらしょ」「えんやこら」「さっこらしょ」など、各地で独自の掛け声が発達しました。

10. 海外にも類似の掛け声がある

英語圏では力を入れる際に「heave-ho」、韓国語では「영차(ヨンチャ)」など、世界各地に力を込めるときの掛け声が存在します。宗教的な祈りの言葉が日常の掛け声に変化するという現象は、日本の「どっこいしょ」に特有のものです。


修験道の祈りの言葉「六根清浄」が、山を登る人々の口から口へと伝わるうちに音が変わり、やがて日常のふとした動作に寄り添う言葉になった「どっこいしょ」。何気ないひと言の中に、千年を超える山岳信仰の名残が息づいています。