「群馬」の語源――馬の群れが駆けた古代の馬産地の地名
1. 「群馬」の語源は「群れる馬」
「群馬(ぐんま)」の語源は「群(むれ)」+「馬(うま)」、つまり「群れをなす馬」または「馬の群れ」という意味です。「むれうま→ぐんま」という読みの変化は、古代日本語の音の変化(「む」→「ぐ」)によるものです。この地が古くから馬の産地として知られ、馬の群れが草原を駆けていた様子が地名の由来になりました。
2. 奈良時代には「群馬郡」が存在した
「群馬」という地名は少なくとも奈良時代にはすでに存在しています。奈良時代の地誌『和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)』に「上野国(こうずけのくに)群馬郡(ぐんまぐん)」として記録されており、現在の群馬県西部に当たる地域を指していました。古代から続く地名です。
3. 古代の馬産地としての群馬
古代日本において馬は軍事・農業・交通に不可欠な動物で、国家が管理する牧場(牧)が各地に設けられました。上野国(現在の群馬県)は関東平野の北に位置し、草原と水に恵まれた地形が馬の飼育に適していました。朝廷への貢馬が行われていた重要な馬産地でした。
4. 「上野(こうずけ)」という旧国名
現在の群馬県は、かつて「上野国(こうずけのくに)」と呼ばれていました。「上野」は「かみつけ」→「こうづけ→こうずけ」と読みが変化したもので、「上毛野(かみつけの)」を略したとされます。「毛野(けの)」は毛を表し、馬の産地を指すという説があります。栃木県が「下野国(しもつけのくに)」で対をなしています。
5. 群馬県の誕生と廃藩置県
「群馬県」という名称は1871年(明治4年)の廃藩置県で登場しました。旧国名「上野」から取らず、郡名の「群馬」を県名にしたのは、当時複数の藩に分かれていた上野国の一部を合併して新しい行政区画を作ったためです。その後、1873年に熊谷県に合併されたり分離されたりを繰り返し、現在の群馬県の形になりました。
6. 「上毛三山(じょうもうさんざん)」と群馬のシンボル
群馬県を象徴する山として「上毛三山(じょうもうさんざん)」があります。赤城山(あかぎやま)・榛名山(はるなさん)・妙義山(みょうぎさん)の三山で、群馬の民謡「上毛かるた」でも「つる舞う形の群馬県」と詠まれています。「つる(鶴)が舞う形」は群馬県の形を上から見たときの比喩です。
7. 養蚕・絹産業と群馬
群馬は馬産地としてだけでなく、近代以降は養蚕・絹産業の中心地として発展しました。「富岡製糸場(とみおかせいしじょう)」は1872年(明治5年)に設立された官営模範工場で、2014年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。「絹の国・ぐんま」として、馬産地とは異なる産業的な顔も持ちます。
8. 「群馬」の読み方の変化
「群馬」はもともと「むれうま→むれま」と読まれていた可能性があります。奈良時代の文献では「久留末(くるま)」「具留馬(ぐるま)」「群馬(ぐんま)」など複数の表記・読みが見られ、現在の「ぐんま」という読みに定着したのは比較的後のことです。地名の読みが時代とともに変化した例の一つです。
9. 「ぐんまちゃん」と群馬PR
群馬県のマスコットキャラクター「ぐんまちゃん」は馬をモチーフにした可愛らしいキャラクターで、全国的な知名度を持ちます。馬の産地としての語源が現代のキャラクターにも反映されており、「ぐんまちゃん」は「ゆるキャラグランプリ」で2014年に1位を獲得しました。語源と現代のブランドイメージが一致している珍しい例です。
10. 「群馬(ぐんま)」に似た地名
「群馬」と同様に動物の名前を含む地名は日本各地にあります。「駒ヶ岳(こまがたけ)」の「駒(こま)」も若い馬を意味し、馬産地や馬に関連する地形に多く見られます。「馬入(うまいり)川」「駒沢(こまざわ)」「神馬(じんめ)」なども馬にまつわる地名で、古代の馬文化が各地の地名に刻まれています。
「馬の群れ」という力強い語源から始まった群馬という地名。奈良時代から現代のゆるキャラまで、馬のイメージが脈々と受け継がれてきた地名です。