「いろは」の語源は"色は匂へど"?日本最古の手習い歌の由来


1. 「いろは歌」の冒頭三文字

「いろは」は平安時代に作られた「いろは歌」の冒頭三文字です。「いろはにほへと」で始まるこの歌は47文字の仮名をすべて一度ずつ使った歌で、仮名の手習い(練習)に使われました。

2. 全文は仏教の無常を詠んでいる

いろは歌の全文は「色は匂へど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず」。花は美しく咲いても散る、この世に永遠のものはないという仏教の無常観を詠んだ歌です。

3. 作者は空海とする説が有名

いろは歌の作者は不明ですが、空海(弘法大師)が作ったとする説が古くから伝わっています。ただし言語学的な分析から、空海の時代よりも後の10世紀後半から11世紀に作られたとする見方が有力です。

4. 47文字を重複なく使う技巧

いろは歌がもっとも注目されるのは、47の仮名をすべて一度ずつ、重複なく使って意味のある歌を作り上げた技巧です。英語の「パングラム(The quick brown fox jumps over the lazy dog)」に似た試みですが、文学的完成度がはるかに高いです。

5. 「いろは順」はかつての五十音順

「いろは順」はかつて五十音順に代わる仮名の並び順として広く使われていました。辞書や法律の条文番号、歌舞伎の座席番号などに「いろは順」が用いられ、明治時代まで標準的な配列法でした。

6. 「いろはの”い”の字も知らない」

「いろはの”い”の字も知らない」は、基礎的な知識すら持っていないことを意味する慣用表現です。「いろは」が学問の入門を象徴することから、その最初の一文字すら知らない=まったくの無知という比喩になっています。

7. 「いろは坂」は日光の名所

栃木県日光市の「いろは坂」は、48のカーブがあることから「いろはにほへと…」の48文字にちなんで名付けられました。紅葉の名所としても知られ、秋には多くの観光客が訪れます。

8. カルタの「いろはかるた」

「いろはかるた」は「いろは順」に沿ってことわざを読み札にしたカルタ遊びです。「犬も歩けば棒に当たる(い)」で始まる江戸版と「一寸先は闇(い)」で始まる上方版があり、地域によって内容が異なります。

9. 消防の「いろは組」

江戸時代の町火消し(消防組織)は「いろは四十八組」と呼ばれ、いろは順で各組に名前がつけられていました。「い組」「ろ組」「は組」と続くこの命名法は、いろはが社会制度にまで使われていた例です。

10. 現代でも「いろは」は入門の意味

現代でも「いろは」は物事の基本・入門を意味する言葉として使われています。「投資のいろは」「料理のいろは」のように、基礎から学ぶという意味で日常的に使われる表現です。


仮名の手習いから始まった「いろは」。47文字に仏教の無常を込めた平安の歌人の技巧は千年を超え、今も「物事の基本」を意味する言葉として日本語の中に生き続けています。