「いたずら」の語源は?もとは「死ぬこと」を意味した言葉だった


「いたずら」のもとの意味は「虚しい・無駄」

現代語で「いたずら」といえば悪ふざけや悪戯を思い浮かべますが、古典日本語では「徒ら(いたずら)」は「無駄なこと」「空虚なこと」「役に立たないこと」を意味しました。「いたずらに時を過ごす」=「無駄に時間を費やす」という用法が平安文学に多く残っています。

「いたずら死に」という古語

古典語では「いたずら死に」という表現があり、「何も成し遂げずに亡くなる」「無駄に死ぬ」という意味でした。源氏物語や枕草子などの平安文学には「いたづらになりぬ」=虚しくなった・死んでしまった、という婉曲な死の表現が見られます。「いたずら」が「死・消滅」と結びついていた証拠です。

語形「いたづら」は「徒(いたづ)+ら」

語形としては「いたづ(徒)」という語幹に、空虚さや状態を表す接尾語「ら」が付いたものと考えられています。「徒(いたづ)」は「実質がない」「中身がない」という意味を持つ古語で、「徒ら(いたずら)に」は副詞的に「むなしく・無益に」という意味になります。

「いたずら者」の意味の変遷

中世から近世にかけて、「いたずら者(いたずらもの)」は「役立たず」「ぐうたらな人間」を指す言葉でした。江戸時代になると「いたずら者」が「悪ふざけをする者」「やんちゃな子ども」の意味合いを帯びてきます。「役に立たない」→「遊んでばかりいる」→「悪ふざけをする」というイメージの移行が見られます。

子どもの悪ふざけを指すようになった経緯

江戸時代の庶民文化の中で、子どもが無目的に遊んで騒ぐ様子を「いたずら」と呼ぶようになりました。「役に立たないことをしている」という原義が「目的のない遊び」「人を困らせる悪ふざけ」へと意味がシフトしていきました。この意味の変化は17〜18世紀にかけて進んだとされています。

「いたずら書き」という表現

「いたずら書き(いたずらがき)」は「無目的に書く・落書き」という意味です。「何の役にも立たない書きもの」という原義が残った表現で、紙の余白や壁への落書きを指します。授業中のノートの端に描いた落書きも「いたずら書き」で、「徒ら(無益な)書き」という語源のイメージが今も生きています。

現代語の「いたずら」

現代語の「いたずら」は主に「悪ふざけ」「人を困らせる行為」という意味で使われます。「いたずら電話」「いたずら好きな子」のように、軽い悪意や遊び心を含んだ行為を指します。古語の「虚しさ・無益さ」という哲学的な響きは薄れ、比較的軽い意味に落ち着きました。

「徒」という漢字が残す原義

「いたずら」に当てられる漢字「徒」は「むだ・実質のない・空虚」を表します。「徒労(とろう)」=無駄な労力、「徒歩(とほ)」=乗り物なしで歩く(実質的な移動手段なし)、「徒手(としゅ)」=手ぶら(何も持たない)など、「実質・中身がない」という意味の熟語に同じ漢字が使われています。「いたずら」の語源が「無益・空虚」だったことは、この漢字からも読み取れます。