「鰯(いわし)」の語源は"弱し"?日本人に愛された小魚の雑学10選


1. 「いわし」の語源は「弱し」という説が有力

「いわし」の語源として最も広く知られるのが、「弱し(よわし)」が転訛したという説です。鰯は水揚げ後に非常に傷みやすく、鮮度が落ちるのが早い魚です。そのか弱さから「よわし」と呼ばれ、やがて「いわし」に変化したとされています。

2. 漢字「鰯」は日本独自の国字

「鰯」という漢字は中国由来の漢字ではなく、**日本で作られた国字(和製漢字)**です。魚偏に「弱」を組み合わせており、語源説の「弱し」をそのまま字形に取り込んでいます。「鰯」は「鱈(たら)」「鱚(きす)」などと並ぶ代表的な魚の国字のひとつです。

3. 主な種類はマイワシ・カタクチイワシ・ウルメイワシの3種

日本で「いわし」と呼ばれる魚は主に3種類あります。マイワシは最もポピュラーで体側の黒い斑点列が特徴、カタクチイワシは口が片側に偏っているように見える小型種で煮干しの原料になることで知られます。ウルメイワシは目が大きく潤んで見えることから「潤目鰯」の名があります。

4. 節分の「柊鰯(ひいらぎいわし)」

節分の風習として、焼いた鰯の頭を**柊(ひいらぎ)**の枝に刺して玄関に飾る「柊鰯」があります。鰯を焼く臭いと煙が鬼を遠ざけ、柊の葉の棘が鬼の目を刺すという魔除けの意味があります。この風習は平安時代頃から存在するとされています。

5. 煮干し・いりこはカタクチイワシが原料

だし取りに使う煮干し(西日本では「いりこ」とも呼ばれる)は、主にカタクチイワシを塩水で煮てから乾燥させたものです。「いりこ」の「いり」は「炒る・煎る」の意味で、乾燥させる工程に由来します。煮干しとだし昆布を合わせた「合わせだし」は和食の基本の出汁です。

6. 「目刺し(めざし)」は串の刺し方が名前の由来

鰯の干物のひとつ「目刺し」は、目の部分に串を刺して干す調理・保存法からその名がつきました。複数の鰯を目に串を通して並べて干す様子が特徴的です。昔の庶民の食卓の象徴として文学作品や俳句にも登場し、質素な生活の代名詞とされることもあります。

7. 「鰯の頭も信心から」のことわざ

「鰯の頭も信心から」とは、鰯の頭のような取るに足らないものでも、信じる人には御利益があるように思えるという意味のことわざです。節分の柊鰯の風習とも関連しており、信仰心や思い込みの力を表現するために広く使われてきました。

8. ちりめんじゃこはカタクチイワシの稚魚

ちりめんじゃこはカタクチイワシやマイワシの稚魚(シラス)を塩茹でして乾燥させたものです。乾燥度合いによって、湿気の多い「釜揚げシラス」、半乾燥の「しらす干し」、よく乾燥させた「ちりめんじゃこ」と区別されます。カルシウムが豊富で日本の食卓に欠かせない食材です。

9. 世界の「いわし」—サーディンとの関係

英語で鰯を意味する「sardine(サーディン)」は、地中海のサルデーニャ島付近でよく漁獲されたことに由来するとされています。缶詰のサーディンはヨーロッパではニシンやスプラット、日本ではイワシ類が使われます。缶詰文化の普及により、鰯は世界的に広く流通する魚になりました。

10. 鰯は江戸時代に肥料としても重宝された

鰯は食用だけでなく、江戸時代には**「干鰯(ほしか)」**という農業用肥料として広く利用されました。鰯を干して作った干鰯は窒素・リン酸を多く含む優れた肥料で、綿花や菜種の栽培に不可欠とされました。干鰯の流通は江戸時代の商品経済の発達にも大きく寄与しています。


「弱し」が転じてできたとされる「いわし」は、食用から肥料・だしまで幅広く日本人の生活を支えてきた魚です。傷みやすいその性質ゆえにつけられた名前が、長い歴史の中で国字にまで昇華されたことは、鰯が日本文化にいかに深く根ざしているかを物語っています。