「かぼちゃ」の語源は?カンボジアから伝わった野菜の名前の由来
「かぼちゃ」という名前の不思議
かぼちゃはハロウィンのシンボルとして世界的に知られる野菜ですが、日本語の「かぼちゃ」という名前は世界でもほぼ日本語にしかない独特の呼び名です。英語では pumpkin / squash、フランス語では citrouille、中国語では南瓜(なんか)と呼びますが、なぜ日本ではこんなにも異なる名前がついたのでしょうか。
カンボジアのポルトガル語読みが語源
「かぼちゃ」の語源はカンボジア(Cambodia)にあります。16世紀、ポルトガルの交易船が日本に多くの南方物産をもたらしていた時代に、カボチャもカンボジアを経由してポルトガル人が日本に持ち込みました。ポルトガル語でカンボジアは「Camboja(カンボジャ)」と表記され、日本人はこの野菜を「カンボジャから来たもの」として「かぼちゃ(南瓜、カボチャ)」と呼ぶようになりました。国名がそのまま食材の名前になった珍しい例です。
ポルトガル船が持ち込んだ16世紀の経緯
かぼちゃが日本に伝来したのは天文年間(1532〜1555年)頃とされています。記録では1541年(天文10年)にポルトガル船が豊後(現・大分県)に入港した際に持ち込んだとされる説が有力です。当時ポルトガルはアジアの海上交易を牛耳っており、東南アジア・インド・日本を結ぶルートで様々な物産を流通させていました。かぼちゃの原産地は中南米ですが、ポルトガルによって世界に広められ、カンボジア経由で日本に届きました。
「南瓜」という漢字表記
かぼちゃの漢字表記は「南瓜」で、「なんか(ナンクワ)」とも読みます。「南」は南方・南蛮を指し、「瓜(うり)」はウリ科の植物を表す字です。南から来たウリ科の植物、という意味の当て字的な表記で、中国でも同じく「南瓜」と書きます。日本では「南瓜」を「かぼちゃ」と読む慣用読みが定着しており、「なんか」と読む場合は主に学術的・漢語的な文脈に限られます。
「ぼうぶら」という別名
かぼちゃには地方によって「ぼうぶら」という別名もあります。こちらもポルトガル語の「abóbora(アボボラ)」に由来します。「abóbora」はポルトガル語でカボチャ・ウリ類を意味する語で、これが日本語に転訛して「ぼうぶら」となりました。九州地方、特に長崎・大分など南蛮貿易の拠点となった地域に「ぼうぶら」という呼称が残っており、ポルトガルとの交流を示す語として地名・郷土料理の名前にも使われています。
かぼちゃの栄養と日本食文化への定着
日本に伝来したかぼちゃはすぐに各地に広まり、江戸時代には庶民の食卓に定着しました。保存性が高く、栄養価に優れ(ベータカロテン・ビタミンC・ビタミンE・食物繊維が豊富)、様々な料理に応用できる点が受け入れられた理由です。「かぼちゃの煮物」「かぼちゃのスープ」「かぼちゃの天ぷら」など和洋中を問わず使われる食材となりました。
冬至にかぼちゃを食べる習慣
日本では冬至(12月22日頃)にかぼちゃを食べる習慣があります。夏野菜であるかぼちゃを保存して冬至に食べることで、風邪をひかない・運が向いてくると言われてきました。「冬至の七草」としてかぼちゃを含む「ん」のつく食材(にんじん、れんこん、ぎんなん、きんかん、かんてん、うどん=うんどん)を食べる習慣もあり、日本の食文化にしっかりと組み込まれています。
ハロウィンとかぼちゃのつながり
近年はハロウィン(10月31日)に伴い、かぼちゃのランタン(ジャック・オー・ランタン)文化も日本に広まっています。ハロウィンのかぼちゃはアイルランド起源でアメリカに渡った文化ですが、カンボジア経由でポルトガルから来た日本の「かぼちゃ」と、アイルランドからアメリカに渡った「pumpkin」が、現代の日本でハロウィンとして再合流している点は興味深い歴史の交差といえます。かぼちゃという名前に込められたカンボジアの記憶は、500年近い時を経た今も日本語に残っています。