「親知らず」の語源は親が知らない歯?大人になって生える歯の由来


1. 「親が知らないうちに生える歯」が語源

「親知らず」の語源は、親が知らないうちに生えてくる歯という意味です。乳歯から永久歯への生え変わりは親が見守りますが、親知らずは成人前後に生えるため、親の手を離れた後に生える=親が知らない歯ということでこの名前がつきました。

2. もうひとつの説:親の寿命と歯の時期

別の説として、昔は人の寿命が短かったため、親知らずが生える頃にはすでに親が亡くなっていることが多く、「親を知らない歯」と呼ばれたという説もあります。どちらの説も「親がいない時期に生える」という点で共通しています。

3. 正式名称は「第三大臼歯」

歯科医学では親知らずは**「第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)」**と呼ばれます。口の一番奥に位置する臼歯で、上下左右に各1本ずつ、最大で4本生える可能性があります。「智歯(ちし)」とも呼ばれます。

4. 英語の「wisdom tooth」も知恵の歯

英語で親知らずは**「wisdom tooth(知恵の歯)」**と呼ばれます。分別がつく年齢(wisdom=知恵がつく頃)に生えることからの命名で、日本語の「親知らず」とは着眼点が異なりますが、「大人になってから生える」という共通点に基づいた名前です。

5. 生えない人が増えている

現代人は顎が小さくなる傾向にあり、親知らずがまったく生えない人が増えています。親知らずの有無は遺伝的な要因が大きく、レントゲンで確認しても歯胚(歯の芽)自体が存在しない人もいます。人類の進化の過程で退化しつつある器官のひとつとされています。

6. 抜歯の対象になりやすい

親知らずは顎の奥に十分なスペースがないまま生えてくることが多く、斜めに生える・歯茎に埋まったまま・隣の歯を圧迫するなどの問題を起こしやすいため、抜歯の対象になりやすい歯です。ただし正常に生えて噛み合わせに問題がなければ抜く必要はありません。

7. 生える時期は17〜25歳頃

親知らずが生える時期は一般的に17〜25歳頃です。他の永久歯が6〜12歳頃に生え揃うのに対し、親知らずだけが大幅に遅れて生えてきます。30代以降に生えてくるケースもあり、個人差が非常に大きい歯です。

8. 古代人は親知らずを普通に使っていた

古代の人類は硬い食物を噛むために強い顎と多くの臼歯が必要でした。親知らずも重要な咀嚼用の歯として機能しており、問題なく噛み合わせに参加していました。食生活の変化で顎が小さくなった現代人にとって、親知らずはいわば「余分な歯」になりつつあります。

9. 「親知らず」は地名にもある

新潟県糸魚川市には**「親不知(おやしらず)」**という地名があります。こちらは断崖絶壁の海岸を指し、波が荒く危険なため「親は子を、子は親を顧みる余裕がない」ほど必死に通る道という意味です。歯の「親知らず」とは語源が異なりますが、同じ「親が知らない」の語感を持っています。

10. 抜歯後の腫れは「親知らずあるある」

親知らずの抜歯後に頬が大きく腫れる経験は、多くの人が共有する「親知らずあるある」です。特に下顎の親知らずは骨に深く埋まっていることが多く、抜歯が大がかりになるため術後の腫れも大きくなりがちです。


親の手を離れた後に密かに生えてくるから「親知らず」。人類の進化とともに退化しつつあるこの歯は、古代には頼もしい咀嚼の道具だったのに、現代では厄介者扱いされることが多い、時代に取り残された歯です。