「焼売」の語源は中国語「焼賣(シャオマイ)」?「焼く」とは無関係な名前の由来
1. 「シュウマイ」は中国語「焼賣(シャオマイ)」の日本語読み
「シュウマイ(焼売)」という名前は、中国語の「焼賣(シャオマイ / shāo mài)」をそのまま漢字で受け取り、日本語の音読みで読んだものです。中国語の発音「シャオマイ」と日本語の「シュウマイ」はかなり異なりますが、漢字を介して伝わった食べ物であることがわかります。
2. 「焼」は「焼く」ではなく「熱い」を意味する
「焼売」の「焼」という字を見ると、日本語では「焼く」を連想しますが、この文脈での中国語の「焼(shāo)」は料理の「焼く」という動作ではなく、「加熱する・熱い」というニュアンスを持ちます。シュウマイは蒸して作る料理であり、焼いてはいません。この字は「熱々の状態で提供される食べ物」を指しているのです。
3. 「賣(売)」は「売る」を意味する
「焼賣」の「賣(mài)」は「売る」を意味する字です。繁体字では「賣」、簡体字では「卖」と書きます。「焼(熱い)+賣(売る)」を直訳すれば「熱いものを売る」となります。これは屋台や市場で熱々の点心を売り歩く様子を表した名前です。
4. 語源は「屋台で売る熱い点心」
「焼賣」という名前の原義は「熱い点心を売る」こと、つまり屋台や市場で売られる出来立ての蒸し点心を指していました。中国では古くから街頭の屋台文化が発達しており、蒸籠で蒸したできたての点心を売る光景が日常にあり、その商売の形が名前になったと考えられています。
5. 発祥は中国内モンゴル自治区・フフホト周辺という説
焼売の発祥地については諸説ありますが、中国内モンゴル自治区のフフホト(呼和浩特)周辺とする説が有力です。明代(1368〜1644年)には現在の形に近い焼売がすでに存在していたとされており、当時の茶館で提供されていた記録が残っています。中国では「稍麦(シャオマイ)」という別表記も見られます。
6. 日本への伝来は中国料理店を通じて
シュウマイが日本に広まったのは明治時代から大正時代にかけてで、横浜や神戸の中華街を中心に中国料理として紹介されました。その後、昭和初期に崎陽軒(横浜)が駅弁として販売を始めたことが、シュウマイを全国区の食べ物として定着させるきっかけになりました。
7. 崎陽軒の「シウマイ」表記には理由がある
横浜の崎陽軒が販売する商品は「シュウマイ」ではなく「シウマイ」と表記しています。これは1928年(昭和3年)の発売当初からの表記をそのまま継承しているためで、戦前の日本語では「シウマイ」という音写が一般的でした。長年の商品名として定着しており、今もあえて変えていません。
8. 中国各地で形・具材が大きく異なる
中国では地域によってシュウマイの形や具材が大きく異なります。広東式(飲茶で有名なもの)は豚肉とエビが入り上部が開いた形が一般的ですが、内モンゴル・山西省などの北方系は羊肉を使うものもあります。日本のシュウマイは豚肉が主流で、上部にグリーンピースを乗せたスタイルが定番化しています。
9. 「焼売」と「餃子」の漢字の違い
「焼売」と「餃子」はどちらも中国発祥の点心ですが、漢字の構成は対照的です。「餃子」の「餃」は食偏(食べ物を表す偏)を持ち、食べ物であることが字の中に示されています。一方「焼売」は食偏を持たず、「売り物の形態」を名前にしている点が特徴的です。食べ物の本質を名前に込めるか、売り方を名前にするかという発想の違いが見えます。
10. 世界各地に広まった「シュウマイ」の仲間たち
シュウマイに似た食べ物は東南アジアや南アジアにも広まっています。インドネシアの「シオマイ(Siomay)」はシュウマイが転訛したもので、魚肉を使い蒸してからピーナッツソースをかけて食べます。ネパールやチベットの「モモ(Momo)」も構造的に近い点心で、中国文化圏の影響が広い範囲に及んでいることがわかります。
「焼く」とは無関係なのに「焼」の字を持つシュウマイ。その名前は「熱い点心を屋台で売る」という中国の街頭食文化を写し取った言葉でした。中国語「シャオマイ」が日本語に渡って「シュウマイ」になり、崎陽軒の駅弁を通じて日本全国に定着するまで、この小さな蒸し点心は長い旅をしてきたのです。