「手ぬぐい」の語源は"手を拭う布"?万能な日本の布文化の由来
1. 「手を拭う布」が語源
「手ぬぐい(てぬぐい)」は「手」と「拭い(ぬぐい=拭くこと)」の組み合わせで、手を拭くための布を意味します。動詞「拭う(ぬぐう=拭き取る)」の名詞形が「ぬぐい」です。
2. 奈良時代にはすでに存在
手ぬぐいの歴史は古く、奈良時代の正倉院にも麻の布が収蔵されています。当初は神事や儀式に用いる布でしたが、平安時代以降に日常の手拭き・汗拭きとして庶民に広まりました。
3. 木綿の手ぬぐいは江戸時代に普及
綿(木綿)の手ぬぐいが広く普及したのは江戸時代です。木綿栽培の拡大により安価に作れるようになり、手拭き・頭巾・鉢巻き・包帯・風呂敷代わりなど万能な布として庶民の生活必需品になりました。
4. 手ぬぐいは歌舞伎の小道具
歌舞伎では手ぬぐいが重要な小道具として使われます。踊りの演目では手ぬぐいを使った所作が見せ場となり、贔屓の役者の名前入り手ぬぐいを観客に投げ渡すファンサービスも行われていました。
5. 「被る」「巻く」「包む」の三用途
手ぬぐいは「被る(頭にかぶる)」「巻く(鉢巻きにする)」「包む(物を包む)」の三つの用途で使い分けられます。一枚の長方形の布から多様な使い方ができる汎用性は風呂敷と共通しています。
6. 端を縫わないのが伝統
手ぬぐいの端は切りっぱなしで縫っていないのが伝統的なスタイルです。縫わないことで水切れがよく乾きやすいのが利点で、使い込むうちに自然とほつれが止まります。
7. 染めの技法で個性を出す
手ぬぐいは「注染(ちゅうせん)」「型染め」「捺染(なっせん)」など日本独自の染色技法で作られます。粋な柄の手ぬぐいは江戸時代からおしゃれアイテムとして好まれ、柄選びにこだわる文化がありました。
8. タオルに取って代わられた
明治時代以降、西洋から伝わったタオルが手ぬぐいに代わって主流になりました。厚手で吸水性の高いタオルは実用面で手ぬぐいを上回り、家庭での手ぬぐいの使用は減少していきました。
9. 近年は「手ぬぐいブーム」が復活
近年はデザイン性の高い手ぬぐいが人気を集め、手ぬぐい専門店も増えています。額に入れて飾るインテリアとして、ハンカチ代わりとして、エコなラッピング素材として、手ぬぐいの価値が再発見されています。
10. 剣道では今も手ぬぐいが必需品
剣道では面を着ける前に手ぬぐいを頭に巻く作法があり、手ぬぐいは今も現役の必需品です。武道における手ぬぐいの使用は、日本の布文化が武術とともに受け継がれている例です。
手を拭う布「手ぬぐい」。拭き・被り・巻き・包み、一枚の布で何役もこなす万能さは、シンプルな道具に多くの知恵を込める日本の暮らしの美学そのものです。