「うなぎ」の語源は"胸が黄色い"から?万葉集にも登場する古い魚の名前


1. 語源は「むなぎ(胸黄)」とされる

「うなぎ」の語源としてもっとも有力なのは、「むなぎ(胸黄)」が変化したという説です。うなぎの腹側(胸のあたり)が黄色みを帯びていることから「胸が黄色い魚」→「むなぎ」→「うなぎ」と音が変化していったと考えられています。

2. 万葉集にも「むなぎ」として登場

奈良時代の歌集『万葉集』には、大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ歌に「武奈伎(むなぎ)」として登場しています。「石麻呂に吾れもの申す夏痩せに良しといふものぞ武奈伎取り食せ」という歌で、すでに奈良時代には夏バテにうなぎが良いとされていたことがわかります。

3. 「鰻」の漢字は中国由来

「鰻」という漢字は中国語から取り入れたもので、魚へんに「曼」を組み合わせています。「曼」には「長く伸びる」という意味があり、うなぎの細長い体の特徴を表しています。

4. 「土用の丑の日」の仕掛け人

うなぎを土用の丑の日に食べる習慣を広めたのは、江戸時代の学者・平賀源内(ひらがげんない)とされています。うなぎ屋から売上不振の相談を受けた源内が「本日丑の日」と書いた看板を出すことを提案し、「丑の日にう(う)の付く食べ物を食べると良い」という民間信仰と結びつけて大当たりしたという逸話が広く知られています。

5. 関東と関西で開き方が異なる

うなぎの調理法は関東と関西で大きく異なります。関東では背開きにして蒸してから焼く(白焼き→蒸し→タレ焼き)のに対し、関西では腹開きにして蒸さずに直接焼きます。関東で背開きが好まれたのは、武士の街で「腹を切る」ことを連想させる腹開きが避けられたためとする説があります。

6. うなぎの生態はいまだ謎が多い

うなぎは長い間、産卵場所が不明でした。2009年に東京大学の研究チームがニホンウナギの天然卵をマリアナ諸島沖で世界で初めて採取することに成功し、大きな話題となりました。それでもうなぎの完全養殖は技術的に難しく、研究が続けられています。

7. 蒲焼きの「蒲」はガマの穂

「蒲焼き(かばやき)」の語源は、うなぎを串に刺して焼いた姿が「蒲(がま)の穂」に似ていたことに由来するとされています。初期の蒲焼きは現在のように開かず、ぶつ切りにして串に刺す素朴なものでした。

8. 世界にはうなぎ料理の文化が広くある

うなぎ料理は日本だけでなく世界各地にあります。イギリスの「ゼリー寄せうなぎ(jellied eels)」、スペインの「うなぎの稚魚料理(angulas)」、中国の「鰻魚飯」など、各地の文化に合わせた調理法が発達しています。

9. 「うなぎのぼり」の語源

物事が急上昇する様子を表す「うなぎのぼり」は、うなぎが水中を勢いよく上っていく姿から来ています。うなぎは実際に流れに逆らって川を遡上する習性があり、その力強い姿が比喩表現として定着しました。

10. 絶滅危惧種に指定されている

ニホンウナギは2014年に国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されました。個体数の減少は深刻で、養殖用の稚魚(シラスウナギ)の漁獲量も大幅に減少しています。持続可能な消費のあり方が問われています。


万葉集の時代から日本人に愛されてきた「うなぎ」。「胸が黄色い」という素朴な観察から名付けられた魚は、千三百年以上経った今も日本の食文化を代表する存在であり続けています。