「お取り寄せ」の語源は"取り寄せる"?全国の美味を届ける文化の由来
「遠方から品物を送らせる」が語源
「お取り寄せ(おとりよせ)」は、「取り寄せる」=遠く離れた場所にある品物を、自分のもとまで送ってもらうという動詞に、丁寧の接頭語「お」を付け加えた言葉です。自分では出向くことのできない土地の産物を、手元に届けてもらうという行為そのものを指す言葉として使われています。
もともとは身分の高い者の特権だった
「取り寄せ」はもともと、殿様や貴族といった身分の高い者が、遠方の名産品をわざわざ運ばせて手に入れる行為を指していました。一般の庶民が各地の名産品を自由に取り寄せられるようになったのは、道路網や輸送手段といった流通のインフラが発達した近現代以降のことです。
百貨店のカタログ通販で庶民に広まった
「お取り寄せ」という行為が広く一般に普及するきっかけとなったのは、百貨店のカタログ通販やテレビショッピングが発達した昭和後期です。全国各地の名産品が一冊のカタログにまとめられ、自宅にいながら注文できるようになったことで、遠方の食を楽しむという習慣が一気に身近なものになりました。
インターネットの普及で爆発的に拡大
2000年代以降、インターネット通販が普及したことで、「お取り寄せ」という文化はさらに爆発的な広がりを見せました。クチコミサイトやSNSで話題になった商品を、誰もがその場で検索し即座に注文できるようになったことで、お取り寄せ文化はまったく新しい段階へと進みました。
独立したジャンルとして確立した「お取り寄せグルメ」
「お取り寄せグルメ」は、いまや食のひとつのジャンルとして確立しています。雑誌の特集記事やテレビ番組の企画、専門のウェブサイトによるランキングなど、お取り寄せ専門のメディアやコンテンツも数多く存在し、独自の市場を形成しています。
コロナ禍を機にさらに需要が拡大
2020年以降、外出が制限される状況が続くなかで、お取り寄せの需要はさらに拡大しました。旅行に出かけられない代わりに、現地の味を自宅まで取り寄せる「旅する食卓」という新しい楽しみ方が広まり、お取り寄せは単なる買い物以上の体験として定着しました。
冷凍・冷蔵輸送の技術がお取り寄せ文化を支える
お取り寄せという文化を技術面から支えているのが、冷凍・冷蔵輸送のインフラです。生鮮食品や繊細な和菓子であっても、全国どこへでも品質を保ったまま届けられる物流網の発達が、お取り寄せの品質と信頼性を支える土台になっています。
お中元・お歳暮など贈答品としての需要
お取り寄せ商品は、お中元やお歳暮といった贈答の場面でも高い人気を集めています。自分自身がこだわって選んだ品を贈ることで、既製の詰め合わせ商品にはない特別感を演出できる点が、贈り物としての価値を高めています。
地方の小規模生産者を支える販路として
お取り寄せは、地方の小規模な生産者にとって重要な販路のひとつになっています。実店舗を構えなくても全国の消費者に直接商品を届けられるお取り寄せの仕組みは、地域経済を下支えする力としても注目されています。
「おうち時間」の楽しみとして定着した食文化
お取り寄せは、自宅で過ごす時間を豊かにする楽しみ方として広く定着しました。全国各地の名店の味を自宅で味わうという贅沢は、外食とはまた違った食の楽しみ方として多くの人に支持されています。殿様の特権として始まった「取り寄せ」という行為が、インターネットを通じて誰もが利用できるものになった歩みは、日本の食の多様性を各地の食卓に届け続ける仕組みそのものといえるでしょう。